ブログ - 星川淳 INNERNET WORKS

【感想文】『宝の海をまもりたい 沖縄・辺野古』

【感想文】『宝の海をまもりたい 沖縄・辺野古』
いんやくのりこ(現代思潮新社)
http://www.gendaishicho.co.jp/search/new.html
 
3.11直後に沖縄本島へ移り住んだ著者が、沖縄の現在に色濃く影を落とす戦中・戦後の過酷な経験はもちろん、琉球独自の歴史や文化に身近に触れながら、いま最も重要な辺野古の問題を掘り下げたユニークな体験記。
 
近年、パワーポリティクスや地政学的な視点から辺野古への米海兵隊基地移設計画に切り込む良書は少なくありませんが、出版・編集経験者としてそれらの側面はきちんと押さえつつ、随所に著者自身が感受するスピリチュアルなビジョンと、生身の人びとが何気なく体現する沖縄古来の精神世界とを織り交ぜ、現状認識とこれからの展望に独特の深みを与えている点、本書に共感を覚えます。
 
社会正義や環境保護のために辺野古・高江の運動に参加する人も、たとえば著者が聞いた「辺野古の沖には『とても大きな女の神さま』がいて、それは久志岳という山の神さまなのだ」という教えから得るものがあるでしょう。山と海が水系でつながっていることは、そのつながりを土地の単位とするハワイ先住民の「アフプア・ア」という考え方と共通ですし、生態学的認識にもとづくバイオリージョナリズム(生命地域主義)の基礎でもあります。そのひとつながりの中にジュゴンもいるのです。
 
逆に言うと、そのつながりのどこかを壊すことは、地域の自然に根ざした人びとの暮らし、そこから育まれる文化・伝統、そして本当の意味の「幸せ」を壊すことにほかなりません。本書にそう書いてあるわけではないのですが、著者は基地問題の本質をそのようなまなざしで語っていると読み取りました。
 
琉球弧北端に位置する島で30数年暮らしてきたぼく自身、ここから北へ向かって、沖縄の人たちがヤマトゥと呼ぶ本土日本と、南へ向かって沖縄(ウチナー)とを見比べ、著者の言葉に頷きます。
「政治が中央集権に流されず、文化がショービジネスにのみこまれないとき、沖縄には郷土に根をおろした、内発的な生きる力があります。一人ひとりが力をとりもどす可能性のひな形が、沖縄にはあります。トラウマに向き合うことで人は精神的な成長をとげるように、沖縄のいまを直視してこそ、無関心と思考停止という、現代日本の病を癒せるのではないでしょうか」
 
(注記:ただし、基地を含め沖縄に現出している問題の多くが本土日本人の政治選択の責任ですから、自分の足元で日本社会を変えることが沖縄の人びとに対する最大の連帯だと思います。)