ブログ - 星川淳 INNERNET WORKS

戦時の危機感を!――都知事選に寄せて

今回の東京知事選、いまのところ支持表明はしていない。多様な考え方の人や団体を支援する民間助成基金を運営する立場上、ここまでビミョ〜に割れた候補選択で宇都宮か細川かを明言すべきでないとの判断からだ。それぞれの候補を支持する人たちに十分な理由があることはわかっているので、一本化できない以上は互いに最善を尽くし、大いに選挙を盛り上げて投票率アップにつなげてほしい。互いにエールを送り合い励まし合うことで、予想外の相乗作用が生まれてくるかもしれない。以下はそれでも表明しておきたいと思うこと。
 
この選挙が行われるとわかった当初から、これが安倍政権の暴走に歯止めをかける最後のチャンスだと直感した。ここで負ければ、あとは集団的自衛権容認、憲法改悪(壊憲)、共謀罪制定、対中局地戦、徴兵制までまっしぐらだろう。もちろん、原発再稼働や事実上の新増設、TPP推進、特定秘密法施行など、その他の悪政もほぼフリーハンドで、次の国政選挙が“民主的”に行われる保証はまったくない。まさにナチスの全権委任法前夜であり、いまは平時ではなく準戦時である。
 
細川・小泉コンビの都知事選参戦が浮上したとき、乱暴なたとえだが、これが暴走列車に投げ込む大岩になると思った。西部劇でインディアンが崖の上から転げ落とす、あれだ(本題ではないので「インディアン」がかならずしも差別語でないという説明は省略)。今回の本当の大命題は脱原発でさえなく、アベノファシズムの暴走に十分なブレーキをかけられるかどうかが死活的問題だという直感は、選挙戦がスタートし、通常国会が始まってもいよいよ強まるばかり。
 
この暴走列車はかれこれ20年以上勢いを増してきたもので、それを止めようとする力はどんどん削がれて、もう後がない(雲散霧消した野党を見よ!)。あとひと息で壊憲まで突き進もうとする暴走列車に歯止めをかけるには、それだけの打撃を与えるインパクトが要る。細川・小泉コンビは、投げ込む岩として十分な大きさと破壊力を持ちうると思うが、選挙に勝たなければその破壊力は発効しない。しかし、細川候補だけでは自民・公明・連合の組織票に及ばない可能性が大きい。そこで宇都宮陣営との一本化に期待した。
 
以上は、細川候補の政策うんぬん以前の大局(ビッグピクチャー)から見えていたことで、自分の好みとか細川・小泉の過去とかは関係ない(市民派の多くと同様、とくに小泉は天敵だった)。とにかくここは大岩を投げ込んで暴走列車を止め、そのあいだに少しでも窮地を挽回できればいいという本能的な判断だ。本来は宇都宮支持に回るところ、細川支持を表明している多くの人が、「脱原発」を大義に掲げつつ、じつはこういう本能的直感で動いているのではないか。
 
宇都宮候補や彼を支持する人たちの諸々の主張に異論はない(というか、いつも自分が口にしていることばかりだ)。政策も人柄も、参加型民主主義促進への貢献度も、平時なら第一の候補だろう。ただし、現在のような準戦時の歯止めになるか、候補自身や支持者から伝わってくる「負けても後がある」「勝ち負けじゃなくて何を学ぶかだ」といった認識に平時の甘さはないか、疑問が残る。暴走列車に石を落とそうというとき、その前にバリケードを築こうというとき、石の形だの素材だのにこだわりすぎてもしかたがない。肝心なのは、勢いづいた相手が一番手こずりそうな障害物を、手遅れにならないタイミングで投げ込むことだ。いまはそのくらいの危機だと思う。戦争を体験した世代、その体験を直接聞いて育った世代ほど、本来なら宇都宮支持のところ細川支持に回っているのは、止めたくても止められなくなる戦時の怖さを知り、それが間近に迫る体感に背中を押されるからかもしれない。
 
細川陣営も宇都宮陣営も最善を尽くしてほしい。ただ恐れるのは、「二つ合わせれば止められたのに、どちらの岩も暴走列車を止めるには小さすぎたね」という結果になることだ。その場合、長く暗い冬の時代を迎える覚悟をしなければならない。このチャンスを逃したら、悔やんでも悔やみきれない。
 
細川陣営は有名人を連ねればいけるだろうという油断、宇都宮陣営は正しければ勝てるという過信に要注意。夢のような投票率アップとか、ワンツーフィニッシュなどという理想にすがるのも危ない。候補者同士の一本化が無理なら、東京の有権者にお願いしたい。どちらが暴走列車を止める有効な選択か熟考を重ね、投票日直前の形勢を見きわめて、死票をつくらない「有権者による一本化」を!